1960年代後半のフリーといえば、ローリング・ストーンズや後のクリームといったグループの影で目立たなかった、数あるブルース系バンドのひとつであった。だが、フリートウッド・マックのように、フリーはブリティッシュ・ブルースの二人の巨匠、ジョン・メイオールとアレクシス・コーナーのおかげで良い方向へ進み、レッド・ツェッペリンのように、すぐにチャンスに恵まれ、スターとなった。シンガーのポール・ロジャースとギタリストのポール・コゾフの出会いが、フリーの成長のきっかけとなった。 デビュー・アルバムをリリースした1年後の1970年初めには、印象深い『All Right Now』により、フリーはNo.2の位置まで登りつめた。これは恐らくはストーンズの『Hoky Tok Wome』に影響を受けた曲であるが、ロックン・ロールの定番作品として、今では世界各国で頻繁に演奏されている。その後レッド・ツェッペリンは伝説となり、その間フリーは二番手のブルース・バンドとしての地位を保っていた。だが、フリーはそこからはトラブル続きとなった。1976年には脱退していたコゾフが心臓発作で突然亡くなった。 そしてそれ以降のフリーは、何を発表してもAll Right Nowを超えられなかった。だが『SOY』を聴くと、これまでに公開されていないスタジオ録音のものや、めったに聴くことができないテスト作品、技術上の原因などで発売されなかった作品といった貴重なものばかりだ。『SOY』は、すばらしく完璧な商品だ。All Right Nowの他はMaki" Love、そしてMy Brother Jake、Little Bit Of Love、Wishig Wellといったなじみのある曲のこれまで発表されていないアレンジなどが収録されている。これまでCD化されていなかった1970年以降のライブの様子も収められおり、その雰囲気がよく表れている。そして、忘れてはならないのが、フリーにはLove You SoやSoo I Will Be Goeのようなソフトな一面もあるということだ。このCDセットは、このバンドを再認識できる素晴らしいものだ。フリーはストーンズやレッド・ツェッペリンのような評価は受けてこなかったが、彼らには大きな潜在能力があった。『SOY』はそれを余すところなく伝えてくれる。P.H.